1.賢者はことわざを作り、愚者はそれを重ねて言う。

『賢者はことわざを作り、愚者はそれを重ねて言う』¹

<はじめに>

 西洋諸国のことわざには、ギリシャ、ラテンの古典と旧・新約聖書という西洋文明の二つの源流から流れ出ているものが多い。さらに、古くから民族移動や政治的融合離散を繰り返し、文化の交流が密であったので、各国に共通して同趣同表現のことわざが非常に多くある。そのためことわざの出生に関わる国籍を特定することは困難であり、また煩雑に過ぎる場合もあるので、以下においては必要な場合を除いては国名を記さないつもりである。

 標記の18世紀イギリスのことわざが示すように、ことわざは著名な思想家や文人たち、すなわちいわゆる賢者の言葉が人口に膾炙して固定したものが多い。しかし、「ことわざは日常経験の娘なり」²、あるいは「ことわざは巷(ちまた)の知恵」³とあるように、大部分は一般民衆の日常経験から生み出された人生の知恵の記録であり、同時に本音であるところに面白みがある。凝縮した表現は一読でその真理を伝達するので、ことさら解説を加える必要のないものが多いが、以下においては、それぞれのことわざに関連して思い出される事柄を含めて、愚者の重言ではあるが、多様な観点から述べてみたい。

1. Wise men make proverbs and fools repeat them.
2. Proverbs are the daughters of daily experience.
3. Proverbs are the wisdom of the streets.

(志子田光雄)

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